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鬱をもって鬱を制す

2011年3月11日、津波から福島の原発で事故が起きたらしいという情報は、当日、同じ集落に
住んでいるひとの長女がオーストラリアからメールしてきたことで判明した。
けれども津波の情報をツイッターで知ってすぐ原発の危機を想定し、避難の体制をとっていたので
改めて驚きもせず、一晩自宅で眠ってから、移動(避難)の体制に移った。

ただ、ラジオもテレビも電話もつながらず、唯一生きていたインターネットだけを頼りにして、
3、11に戸渡に来ていた慶応の学生たちや先生方の消息を探った。
一人、いわきに残った人が見つからず、これを捨てて自分が逃げるわけにもいかず。
メールとツイッターで探し回って反応があり、見つかった。

で、同時に荷物満載のミニバンで山を降りると、途中からラジオの電波が入った。
ラジオのコメンティターは、確かに言った。
メルトダウンが起きました。と。
すぐにラジオの話者は変わり、別の話を始めた。

私たちは義母が一人で住む那須を目指したけど、取り残されたSFCの一人を拾うためにいつも使う
近道を選ばず、いわき市街地へとまず向かった。

これが幸いして、恐ろしい避難ラッシュに巻き込まれず、一度、まだ凍っている道路で難儀をしている
大型トラックをなんとか誘導したくらいでスムーズに福島を脱出できたのだった。

この出来事からもうすぐ丸7年が過ぎるというのに、やはりこのことを思い出すと脈が速くなる。

体(こころ)に触るといけないので、とりあえずこの話はここまでにしておこうと思う。


私の精神障害は、一応、鬱病ということになっているけれど鬱病の薬がどの病院でも効かない。
困ってしまった今の主治医は、思い切って気分が沈む薬を処方したと聞く。

それが意外にも的を射て、完治は無理でも、時折、今現在のように普通に近い暮らしができる
ようになってはいる。

少なくとも、本を読んだりブログを書いたりはできるようになった。

あとは自然に任せて、無理をせず、自分らしい生き方を探さなくてはならない、ということだ。

いま、テンションを上げすぎて、落っこちかかった落とし穴の壁に張り付いて、底まで落ちないように
しながらエネルギーが復活するのを待つようにしている。

知っているのだ、わたしは。
この落とし穴の底にあるものがなんであるか、ということを経験済みだから。

それにしても、主治医の英断には感服する。(女医さんです)
鬱をもって鬱を制したのだ。


福島に置いてきたもので取りに行きたいと思うものはないのか?と聞かれることもある。
それは、戸渡という集落の空間全体でもあるし、家全体と工房と愛した廃校舎でもある。

もっと手軽なもので、と聞かれれば、何冊かの本と森林関係の資料なのだ。

こうして否も応もなく、本を読む時間を得た以上、まだ読んでいない本が何冊もあるのを
持ってきたいと思っている。いわき市内の借り上げアパートにいたとき持ち出した何冊かを
整理してみると今の住まいの条件から一度は始末したと思っていた、森林関係の書が多く残っている。

今日は一日のスタートにしくじったので、一日中本を読む日にすることに決めた。
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写真は幸田文と白洲正子の「木」という文庫本で、今日は幸田文の方を読んだ。
戸渡には広大な自然林が民家の背後に隠されて、ある。
戸渡で行っていたプロジェクトのついでに、この国有林も民間に開放してもらったから(例のないこと)
私は行き詰まるとカメラと三脚を担いでこの森に入った。
木をうたった本を読むと、この針広混合の起伏に富んだ自然林が如実に思い出された。
悲しい。






by derumaku | 2018-03-02 19:50 | 日々のこと